気候変動 07 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 13 気候変動に具体的な対策を

基本的な考え方

DICグループは、製品のライフサイクル全般を通じたCO₂排出量の削減に取り組むとともに、事業活動を通じて気候変動リスクの低減に努めます。

地球温暖化防止への取り組み

DICグループは地球環境と社会のサステナビリティを実現するために、2021年6月にDICNET ZERO 2050を発表し、その中で2050年度カーボンネットゼロ宣言(Scope1, 2)を行いました。また、2023年1月には、CO₂排出削減に関する世界的なイニシアチブであるSBTi※1の認証を受けました(C&E統合の影響に関しSBT事務局に連絡し対応していきます)。DICグループでは63の国と地域でグローバルに展開する190のグループ会社と一体となって、カーボンネットゼロの実現を目指してCO₂排出削減の活動に取り組みます。
またDICグループでは2019年5月にTCFD提言書※2の趣旨に賛同を表明し、同提言に沿った情報開示を推進しています。

  • SBTi:Science Based Target Initiative(SBT機関)。Science Based Target=科学的合理的目標は、国際的な枠組みである「パリ協定」が求める水準を整合した目標を指す。5~15年先を目標として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標が、科学的合理的目標に適う水準(現在はwell-below 2.0℃目標もしくは1.5℃目標)である場合、SBT機関が認定を行う。
  • TCFD 提言書:TCFDはTask Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)のことで、同組織は金融安定理事会(FSB)の要請により設立され、中長期的に企業の財務に影響を与える気候関連のリスクと機会の適切な開示を企業に求める提言を2017年6月に公表している。

主な取り組みの目標と実績

事業所におけるCO₂排出量の削減(Scope1・2)

2022年度 目標 (DICグループ)
DICグループは事業所で排出するCO₂排出量(Scope1&2)を、2013年度を基準年として2030年度までに50%削減する(年平均3.5%削減)
2022年度 実績 CO₂排出量の削減(DICグループ)
  • 2013年度比 21.8%削減 (921,386 ⇒ 720,444t-CO₂)
*2013年の値はC&E推定値を入れて算出しています
評価 ★★
2023年度 目標 (DICグループ)
DICグループは事業所で排出するCO₂排出量(Scope1&2)を、2013年度を基準年として2030年度までに50%削減する(年平均2.9%削減)
2022年度 目標 (日本国内DICグループ)
エネルギー消費原単位の削減(国内省エネ法遵守)2013年度を基準年として2030年度時点にエネルギー消費原単位を17.0%削減する(年平均1.0%削減)
2022年度 実績 エネルギー消費原単位の削減 (日本国内DICグループ)
  • 前年度比 0.9%増加 ( 3.656 ⇒ 3.687 GJ/t)
  • 2013年度比 11.6%削減 ( 4.170 ⇒ 3.687 GJ/t)
評価
2023年度 目標 (日本国内DICグループ)
エネルギー消費原単位の削減( 国内省エネ法遵守)2013年度を基準年として2030年度時点にエネルギー消費原単位を17.0%削減する(年平均1.0%削減)

【参考】
CO₂排出原単位の削減

  • 日本国内DICグループ:前年度比 3.0%削減(196.6 ⇒ 190.6kg-CO₂/t)。2013 年度比 20.1%削減(238.7 ⇒190.6kg-CO₂/t)
  • 「評価」は、進捗度に関する自己評価によるものです。
    [ 評価マークについて ] ★★★…非常に良好 ★★…順調 ★…要努力

推進体制

DICグループでは、日本、欧米地域(Sun Chemicalが担当)、アジアパシフィック地域、中国地域の4拠点で事業活動を通じたCO₂排出削減の取り組みを進めています。地域・拠点によってエネルギー事情や再生可能エネルギーへのアクセス等の条件が異なる中、当面の目標である2030年の50%CO₂排出量削減(2013年度比、Scope1, 2)への取り組みを進めています。
DICグループとして気候変動課題はもっとも重要な社会課題の一つと位置づけており、重要な施策は社長執行役員直轄で運営するサステナビリティ委員会に提案して、同委員会で審議および決定を行い、それに基づいて各拠点で取り組みを推進します。日本においては、具体的なCO₂排出削減の実務については、DICおよび国内DICグループ各社の各事業所に省エネルギー推進委員会を設置し、活動の進捗確認・討議・省エネパトロールなどを実施しています。また、各事業所の選抜メンバーで構成する省エネ推進分科会を設けて、情報交換・新規省エネアイテムの調査と効果検証、さらには他事業所への水平展開などに取り組んでいます。この事業所単位の活動と全社横断的な活動の連携によってCO₂排出量の削減を進めています。
欧米地域においては、C&Eの顔料事業の統合などで事業規 模が拡大する中で、Sun Chemicalが欧州、北米および中南米におけるCO₂排出削減の取り組みを進めています。
アジアパシフィック地域・中国地域においては、各地域でDICグループ全体の方針に基づく取り組みを行い、DIC本社生産企画部が、全体の進捗を管理する体制で進めています。

主な活動

  • DICグループ一丸となった活発でたゆまぬ省エネ活動の推進
  • DX推進による生産・ユーティリティー設備のエネルギーマネジメントの最適化
  • 省エネ性の高い設備の積極導入(高効率設備、ZEB対応建築物)
  • 条件の適した事業所への再生可能エネルギー設備の積極的導入(バイオマスボイラ、風力発電、太陽光発電)
  • 世界全体のDICグループ各社への省エネ診断実施と省エネ施策の展開支援
  • 設備新増設時における省エネ性の高い設備の導入とルール化(環境価値投資、ICPの導入と活用)

TCFD提言に沿った情報開示

TCFDでは投資機関等が気候関連のリスクと機会を的確に把握し財務上の意思決定を行うに当たり、組織運営の中核的要素として「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に関する情報の開示を推奨しています。
DICグループは、気候変動対応に関する情報開示は時代の要請ととらえてTCFD提言に沿った開示を進め、「気候変動リスクへの適切な対応」と「気候変動に伴う機会の創出に向けた取り組み」を進化させ、自社のレジリエンスの向上と積極的な情報発信による社会とステークホルダーの皆様からの信頼の獲得を目指します。

TCFD提言で求められる情報開示

ガバナンス 気候関連のリスクと機会にかかる当該組織のガバナンスを開示する
戦略 気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在および潜在的な影響を開示する
リスク管理 気候関連リスクについて、当該組織がどのように識別、評価、および管理しているかについて開示する
指標と目標 気候関連のリスクと機会を評価および管理する際に用いる指標と目標について開示する

01ガバナンス

DICでは気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しています。CO₂排出削減の中長期目標などの重要な審議は社長執行役員直轄で運営する「サステナビリティ委員会」(年4回開催)において審議・決定するとともに、取締役会規則に基づき取締役会に報告し(原則として、すべてのサステナビリティ委員会議案は取締役会に報告)、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えています。
事業活動における気候変動関連のリスクと機会を適切に評価・管理し経営を推進していくために、サステナビリティ委員会には、社長執行役員・副社長執行役員と生産統括本部長、技術統括本部長、経営戦略部門長、総務法務部門長、財務経理部門長、ESG部門長等の管理部門の長とともに、各事業部門長・製品本部長が構成メンバーとして参加しています。

2022年度サステナビリティ委員会での気候変動に関する主な議案

02戦略

国際社会では、急速に2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、今後競争ルールの変更を伴う社会システムの変化が予測されます。DICでは気候変動に伴うリスクや機会の重要性も意識して、サステナブルな事業戦略を推進しています。気候変動による影響は中長期的に顕在化する可能性が大きいため、中長期的に事業に財務的な影響を及ぼすと考えられる主な気候関連リスク(移行リスク・物理的リスク)と気候関連機会(移行機会・物理的機会)の項目への認識も深めています。
2020年に実施したシナリオ分析に基づき、中長期的な視点で予測される機会とリスクへの認識を高めながら時間軸を踏まえた戦略の立案と実行に結びつけていきます。また、2050年カーボンネットゼロに向けて、2021年に「気候変動対応分科会」を新設し、サステナビリティ委員会に活動報告と審議を行っています。

主なリスク管理の視点

  • 今後カーボンプライシングが導入された場合、原燃料価格や電力価格の上昇、輸出品目の課税措置等が課され、CO₂排出量が直接的なコスト圧迫要因となります。
  • 気候変動に伴う脱炭素社会への移行リスクとして、サーキュラーエコノミー等による急激な需要の変化が起きた場合、これへの対応ができなければ大幅な事業収益の低下をもたらす要因となります。
  • 極端な物理的リスクとして、異常気象による気象災害が深刻化・頻発化すると、事業所の稼働停止、原料調達の不安定化等により製品供給不能や供給の遅延を生じる可能性があり、事業収益の低下と事業継続の可否に関わるリスクとなる可能性があります。

主な気候関連リスク

リスクの内容 説明
移行リスク 新たな規制
Emerging regulation
新たな規制(カーボンプライシング等)による直接コスト増や事業環境/収益性への影響リスク(設備コストや原料価格等)
移行リスク 技術
Technology
技術イノベーションの進展に伴う、製品・サービスが陳腐化・需要縮小するリスク
移行リスク 市場
Market
顧客/消費者の選好変化の情報把握が不十分な場合の商機逸失リスク
急速なサーキュラーエコノミーへの需要の変化に対応できない場合の事業縮小のリスク
移行リスク 市場
Market
顧客/市場より製品カーボンフットプリントの要請が急速に拡大しており、それに対応できない場合に商権逸失を含む事業影響のリスク
移行リスク 評判
Reputation
外部より気候変動に対応する企業姿勢や対応能力が不十分と評価された場合の評判リスク
物理的リスク(短期的)
Acute Physical
異常気象の増大による、生産事業所操業に影響するリスク
物理的リスク(長期的)
Chronic Physical
慢性的な高温状態継続による生産事業所の操業維持/操業コストの増加、および健康ダメージリスク
移行リスク 原料調達
Upstream
モノポリー原料(独占的供給原料)の供給不安と、BCPリスク、原燃料価格や電力価格の上昇、輸出品目の課税措置等によるコスト上昇リスク

主な気候関連機会

機会の内容 説明
移行機会 新たな規制
Emerging regulation
気候変動に関連して新たに導入される規制を機に、自社ビジネスの優位性を発揮した新たなビジネスモデル確立の機会が生じる
移行機会・物理的機会 技術
Technology
技術イノベーションにより、気候変動に対応した低炭素化/脱炭素化新事業の創出の機会、また技術革新によるプロセス改善による製品のコスト競争力強化の機会が生じる
移行機会・物理的機会 市場
Market
顧客/消費者選好の変化(低炭素化製品への事業切り替え、既存事業が回避される可能性)を的確にとらえ、ライフスタイルの変化を先取りした新製品/新サービスを開発する機会が生じる
移行機会・物理的機会
バリューチェーン
Upstream / Downstream
顧客~サプライヤーと有機的に連携して、製品のライフサイクル全体で気候変動に対応(適応•緩和)すると、新たなビジネス•システムを創出する機会が生じる

CO₂排出削減の移行計画

DICグループはCO₂排出削減目標を持つ企業として、下記のように移行計画を持って活動を進めます。
この進行に当たり、DICグループでは現在2030年までに約150億円の環境投資の実施(日本国内を対象)を計画しています。

  • Scope1:CO₂排出量の算定に当たっては、日本は環境省の排出係数を使用。その他の地域は、US EPA(U.S. Environmental Protection Agency)の排出係数を使用。
  • Scope2:電力のCO₂排出量の算定に当たっては、日本は契約先の排出係数を使用。入手できない場合は、日本は環境省の排出係数を使用。北米はeGRIDの排出係数を使用。それ以外の地域は、IEA(2022年度版)の排出係数を使用。

DICグループCO₂排出量削減計画 (Scope 1 & 2)

DICグループCO₂排出量削減計画 (Scope 1 & 2)

シナリオ分析

設定シナリオ 2ºCシナリオ 4ºCシナリオ
参照シナリオ 国際エネルギー機関(IEA)による
①WEO2018のSDS(持続可能な発展シナリオ)
②ETP2017の2DS(2℃シナリオ)
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による
①気候変動予測シナリオRCP8.5
分析対象期間 2030年まで 2030年まで
カーボンプライシング ¥8,000/ t-CO₂ 

シナリオ分析結果Opportunity Risk

主な事象や社会の変化 リスクと機会の評価 DIC グループの対応
2ºC シナリオ政策・規制の強化 カーボンプライシングの導入(直接製造/原料購入) 直接製造で見ると最大50.3億円の製造コストに影響(2018年CO₂排出量は617,964t-CO₂/年)

備考:原料購入分の想定調達コストの影響可能性としては118億円(2018年 Scope3 カテゴリー1の実績推定 1,480,561t-CO₂/年)
Opportunity Risk
Opportunity Risk
  • カーボンプライシングは世界共通で導入されると想定し、コスト競争力自体は維持
  • 高機能化のため、カーボンプライシング影響の軽減化を図る(自動車・エレクトロニクス/ディスプレイ関連・ヘルスケア・化粧品顔料等多分野で推進)
Opportunity Risk
  • 低炭素貢献製品(サステナブル製品)を推進
  • 自動車販売台数の増加とEV化の進行で、PPSコンパウンド等の主力事業の需要拡大
2℃シナリオサーキュラーエコノミーによる需要の変化 One Wayプラスチックの世界的な排出抑制
ブランド・オーナーの容器包装の削減
プラスチックの一部(One Way プラスチック)の需要減少
一方、プラスチック代替の需要拡大、プラスチック以外の用途の影響は軽微
Opportunity Risk
  • 主力製品は、プラスチック/プラスチック代替いずれにも対応可能。バリア機能等様々な機能で差別化を図り事業展開
  • 生分解性、バイオ原料等の新たな要(需要)に向けた事業開発・推進
再生プラスチックの生産、流通量の増加 将来需要の変化は現時点では不明だが、商流に参入していないと将来市場の機会を失うリスクあり Opportunity Risk
  • 顧客とのタイアップ等を志向し、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルへの検討を加速
Opportunity Risk
  • 製品のリサイクルを容易にする素材配合の革新等高付加価値化に注力
2ºCシナリオ直接生産/サプライチェーンにおけるCO₂排出削減要請への対応 省エネ・再生可能エネルギー設備の導入 各年省エネ・再エネ設備投資(計20億円/年)を実施(直接生産)
CO₂削減活動は、市場の評価・信頼維持のためにも重要
Opportunity Risk
  • 2013年~2030年にCO₂排出量30%削減(Scope 1&2)達成に向け省エネ・再エネ設備投資は継続
  • 2013年~2030年で抑制するCO₂排出量分のコスト削減効果は23.1億円(排出削減量は289,000t-CO₂/年)
長期視点では、2050年ネットゼロへの要請スタート 1.5℃目標を目指したCO₂排出削減が始まり、この流れはサプライチェーンを通じても要請されるリスクが高まる Opportunity Risk
  • 1.5℃目標も視野の新SBTへの対応の検討、実行力の向上
  • 社内カーボンプライシング適用により省エネ投資の増加とCO₂削減パフォーマンスの向上
4℃シナリオ気象災害の増加による原料調達への影響 気象災害の頻発化により、サプライヤーの工場生産停止植物由来原料の供給が停止
  • 一部海外原料、モノポリー原料依存事業では安定調達リスクに直面
  • 一方、大部分の製品は技術/購買部門で連携し、代替原料等の対応が可能となっている
Opportunity Risk
  • 重要製品原料については、複数地域での2 社購買やBCP対策の充実・強化
  • 重要製品については、原料・製品の在庫対策も含め対応
4℃シナリオ気象災害の増加による工場操業への影響 気象災害の頻発化により、自社工場の生産停止地下水資源の枯渇
  • 生産拠点が世界各地に分散しており、多くの製品で生産補完性があり供給停止リスクは小さい(一部の主要製品は一極生産のため、影響あり)
  • 水リスクの高くなる懸念のある地域では対策が必要
Opportunity Risk
  • 印刷インキ等、世界各地に生産拠点を配置高潮・洪水等の際の港湾設備利用については、他社連携による影響の軽微化を推進
  • BCP訓練強化とさらなる沿岸地域立地事業所の対策の強化
  • 水リスク対策の実施
損害保険料金の高額化 支払い保険料の増加 Opportunity Risk
  • サステナブル製品の強化・拡充により収益性向上
4℃シナリオ気温上昇によるライフスタイルの変化への対応 気温上昇によるライフスタイルの変化(消費行動の変化→製品需要への変化)
  • 既存製品には、消費行動変化により、需要減の可能性があるが、幅広い需要業界に展開しているので、リスクは小さい
  • 高気温下の新たなライフスタイルに対応した新たな需要増の機会は大きい
Opportunity Risk
Opportunity Risk
  • 気温上昇により、遮熱関連事業の需要拡大
  • 食生活の変化により、飲料業界向け需要拡大、冷凍食品など需要拡大
  • 健康志向により、ヘルスケア・ライフサイエンス分野の需要拡大
  • 数値はシナリオ分析実施時の2018年実績に基づく。2022年実績では、CO₂排出量が720,444t-CO₂のため、同条件でのカーボンプライシングの影響額は最大57.6億円となります。

シナリオ分析後の2020~2023年における取り組み

  • ICP(社内カーボンプライシング)の導入
    排出するCO₂に価格づけを行い、気候変動リスクを定量的に把握し、またCO₂排出削減に対してインセンティブとなるように、インターナルカーボンプライシング制度(ICP)の導入を決定。2021年度の新規投資案件からICPを導入し、設備投資で得られる効果にCO₂削減コストを付加できる仕組みを構築。さらに、ICPの適用範囲の拡大を計画
  • 株式会社エフピコと、プラスチック食品包装容器などの素材であるポリスチレンの完全循環型リサイクルの社会実装に向けた検討を本格化
  • 気候変動対応分科会を新設し、各種施策の実施、新たなCO₂削減目標(2050年度カーボンネットゼロ目標)の発表
  • サステナブルファイナンスによる資金調達
  • ZEB(Net Zero Energy Building)対応の事務所建設。グループ会社のDIC九州ポリマでZEB工法を取り入れた事務棟を竣工。4段階のZEBシリーズのうち最高ランクとなるZEB認証を取得
  • 製品カーボンフットプリントへの取り組みに着手

地域ごとの活動報告

日本国内の活動

日本国内DICグループにおける再生可能エネルギーの大半は、鹿島工場の再生可能エネルギー設備(バイオマスボイラー、風力発電、太陽光発電)によるものです。日本国内DICグループで消費するエネルギー(熱・電気)のうち、15.5%は再生可能エネルギーで賄っています。
2022年度は742千GJ(原油換算量19,136㎘)と前年度比で5.5%増加しました。
日本国内DICグループで導入している再生可能エネルギーのCO₂排出量削減効果は、2022年度で47,173t-CO₂となり、日本国内DICグループのCO₂総排出量の18.5%を再生可能エネルギーで削減した計算になります。2022年には関係会社の星光PMC水島工場で新規の太陽光発電設備(発電能力205kW)を導入いたしました。今後も、DIC NET ZERO 2050で公約いたしましたCO₂排出量削減の新しい中長期目標の達成に向けて、再生可能エネルギーを積極的に導入していきます。

北米・中南米と欧州地域の活動

Sun Chemicalは、温室効果ガスの排出量を削減しDIC Vision 2030の目標を達成するために、省エネ・化石燃料を削減するとともにグリーン電力の購入を大幅に増やす計画を持ち、取り組みを進めています。
化石燃料削減のプロジェクトが成功事例の一つとして、ミラノのSun Chemical社カレッピオ工場の敷地に熱酸化装置を設置した例を紹介します。この装置は廃溶媒蒸気が大気中に放出されないようにコントロールしています。この熱酸化装置は、廃溶剤の排出をゼオライトベッドで濃縮し、装置の運転に必要な天然ガスの量を大幅に削減することで、年間3,100トンのCO₂排出量を削減します。
ドイツにあるSun Chemical社のOsterodeサイトでは、Sun Chemicalは生産のオペレーションに用いる購入電力を大幅に削減する大規模な太陽光発電アレイを設置しました。これにより年間166トンのCO₂排出量を削減しています。
今後さらに、Sun Chemical社ではグリーン電力調達計画を推進し、グリーン電力の購入とオンサイトで発電するグリーン電力使用の両面の取り組みを組み合わせて、CO₂排出量削減に取り組んでいきます。

北米・中南米と欧州地域の活動
北米・中南米と欧州地域の活動

中国地域の活動

张家港迪爱生化工 (DZC)はDICグループで初めてオンサイトPPA(=電力販売契約)を導入しました。建屋屋上などの敷地を提供することで、初期投資費用をかけずに700kWの太陽光発電設備を設置することができ、CO₂排出量の削減に大きく貢献しています。

03リスク管理

リスクを識別・評価しリスク管理を行うプロセス

DICでは、サステナビリティ活動の根幹に位置づける「サステナビリティ・テーマ活動」の中で、気候変動対応に関連するリスクについて認識し、その対応と評価、リスクの管理を行っています。2021年度までは「安全・環境・健康」のテーマの中に位置づけて気候変動リスクを認識、2022年度からは独立した「気候変動」テーマとしてこの取り組みを行っています。サステナビリティ委員会の直下の「サステナビリティ部会」にて重要なリスクと重要な機会の抽出と議論を行い、重要と認識された案件はサステナビリティ委員会に上程する仕組みとなっています。

04指標と目標

世界的な脱炭素社会実現の動きが加速する中、さらに積極的に脱炭素社会の実現に取り組んでいく決意のもと、新たな削減目標を設定しました。
DICグループはサステナビリティの観点から定めたCO₂排出量の長期削減目標を更新し、新たな目標として「2030年度50%削減※1」および「2050年度カーボンネットゼロ」の実現を目指します。

  • Scope1&2、2013年度の排出量を基準とする。
指標と目標

2022年度の主な活動と実績

01DICグループのエネルギー使用量と温室効果ガス排出量(Scope1&2)の実績

2022年度のエネルギー使用量は、14,569,201GJでした。CO₂排出量は720,444トンでした。生産数量1トンあたりのCO₂排出量を指標化したCO₂排出原単位は281.6kg-CO₂/tでした。2022年はC&E買収により大幅な組織境界の変更を伴った影響もあり、エネルギー使用量およびCO₂排出量が増加しています。本変更の影響も含めたエネルギー使用量およびCO₂排出量(Scope1&2)は、第三者機関による検証を受け認証を得る予定です。
2022年度のCO2排出量およびCO₂排出原単位削減目標を達成できたのは新たなCO₂削減目標(2030年度までに2013年度比50%削減)するために、「前中期経営計画(2019~2021年度)では2018年度比で年平均3.5%削減」を国内外の事業所で活動方針にブレークダウンしました。
また、ICP(社内カーボンプライシング)制度を設備投資案件へ取り入れるなど、今まで以上(過去は年平均1%削減目標)に積極的な省エネ・低炭素化施策に取り組んだ成果の現れといえます。取り組みの概要については次項以降で後述します。
今後も引き続き高効率設備の導入や工程改善、設備稼働率の向上といった省エネ施策を実施するとともに、バイオマスなどのクリーンな燃料への転換や太陽光発電の導入といった再生可能エネルギーの採用を増やしていく計画です。
また、サステナビリティ委員会にて日本国内DICグループの全事業所にCO₂フリー電力の導入を決定いたしました。これに伴い、2022年11月より、DIC本社ビル(ディーアイシービル)および第2ディーアイシービルの購入電力をCO₂フリー電力に切り替えました。さらに、2023年から日本国内DICグループで順次CO₂フリー電力に切り替えることを予定しています。

CO₂排出量の増減要因について

02サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(Scope3)

DICグループではサプライチェーンを通じたCO₂削減の重要性を認識し、関連するすべてのカテゴリーについて、その把握と削減に取り組んでいます。また、カテゴリー1(購入した原材料・サービス)については、算出方法の見直しによる精緻化を進めています。

2022年度 サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量
(DICグループ)

生産活動以外(オフィス・研究所)の取り組み

日本国内DICグループのオフィス・研究所は21事業所(総合研究所除く)ありますが、2022年度のエネルギー使用量は前年比で17.6%増加しました。増加要因は拠点数の増加および、これまで算定していなかった社用車の燃料の集計を開始したことです。全般的に取り組んだ省エネ施策は、①古くなった照明器具や空調機器をトップランナー基準に準拠した高効率タイプにリプレイス、②照明の不要時消灯やエアコンの温度設定を徹底、③ビル管理会社と協働および国の節電プログラム促進事業へ参加し、「こまめな」省エネ活動に取り組みました。さらに、④2021年11月より、WSR2020プロジェクトの一環で、ノーネクタイ・ノージャケットの服装を通年で可としました。また、2022年度の新しい取り組みとして、グループ会社であるDIC九州ポリマ株式会社でエネルギー消費量の実質ゼロを目指すZEB※1(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)工法を取り入れた事務棟が竣工いたしました。新事務棟は、太陽光発電や断熱材、LED照明器具などを装備することで、一次エネルギー削減率111%(省エネ+創エネ)を実現しました。なお、事務棟は4段階のZEBシリーズ※2のうち最高ランクとなる『ZEB』認証の取得いたしました。また、当社は経済産業省資源エネルギー庁が公募した2021年度のZEB実証事業に申請し、「ZEBリーディング・オーナー※3」に認定されました。DICグループでは初めての取り組み事例となり、今後もZEB対応の事務所建設に積極的に取り組む予定です。

  • 「ZEB」とは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。
  • 「ZEBシリーズ」とは、ゼロエネルギーの達成状況を省エネ・創エネの割合に応じて以下の4段階に定義したもの。1)『ZEB 』(省エネ+創エネで100%以上削減)、2)Nearly ZEB(同75%以上削減)、3)ZEB Ready(省エネで50%以上削減)、4)ZEB Oriented(延床面積10,000 ㎡以上の建物で事務所等は省エネで40%以上削減)。
  • 「 ZEBリーディング・オーナー」とは、自社事業拠点におけるZEB普及目標やZEB導入計画、ZEB導入実績を一般に公表する先導的建築物のオーナーのこと。
生産活動以外(オフィス・研究所)の取り組み

購買における取り組み

DICは「DICグループCSR調達ガイドライン」に基づき「DICグループサステナビリティ調達ガイドブック(2020年2月改訂Ver.3)」を作成し、これを用いたヒアリング活動を行うなど、サプライヤーへの温室効果ガスの排出削減を働きかけています。
また、DIC製品のカーボンフットプリントの把握と低減を目的に原料のカーボンフットプリントの試算やバイオ由来、リサイクル原料等の探索を推進しています。
さらに、EcoVadisなどの共通の枠組みを通じた、サプライヤーとの対話を重ねることにより、温室効果ガスの削減を推進します。

物流における取り組み

日本国内においては、使用トラックの大型化や台数制限、積載効率向上を進めるとともに、モーダルシフトを積極的に推進し、トラック、鉄道、船の組み合わせによる効率輸送を継続して実施しました。また海外においては各国の実情に沿った効果的な取り組みを進めています。
長期的には、次世代自動車やLNG船等の利用による温室効果ガス排出削減を見据え、それら輸送手段の導入を積極的に検討します。

ICP(社内カーボンプライシング制度)を通じた取り組み

2021年度より導入したICP(社内カーボンプライシング制度)により、排出する温室効果ガス(Scope1&2)に価格づけを行い、それを加味した費用対効果を図るプロセスを進めています。各種設備投資においてCO₂排出の観点からの認識を高めて対応を進め、さらに環境投資を進める上で、削減効果を定量化することで、より正確な判断に基づく投資促進に取り組んでいきます。加えて、ICPの適用範囲拡大を目指し、エネルギー調達や合理化効果算定の中にも反映することを検討していきます。

サステナビリティ指標を通じた取り組み

製品の社会的価値を測るモノサシとして導入したサステナビリティ指標の縦軸では、各製品の環境負荷を定量化し、その削減を進めます。様々な環境負荷の中でも、特に温室効果ガス排出量(Scope1&2)にフォーカスをあて、2030年および2050年の目標達成に向けた進捗を確実にしていきます。

製品カーボンフットプリント算出に向けた取り組み

サプライチェーンを通じたCO₂排出量の削減を進めるためには、当社の製品が、サプライチェーンの上流から提供するまでにどれだけ排出してきたのかを算出し、そこから課題を抽出し、対策を講じなければなりません。顧客・社会の要請に応えサプライチェーンを通じた対話に役立てるべく、この製品カーボンフットプリントを算出するスキーム作りを現在進めています。グローバル顧客の製品CFPの算出要請に応えるべく、Sun Chemicalと統一した製品CFP算出のガイドライン作り、および情報共有のための仕組み作りを進めています。
日本顧客に対しては、サステナビリティ推進部を責任部署とした製品CFP関連の問い合わせに対応する体制を整え、技術、営業に対して説明会を実施しました。

製品の削減貢献(Avoided Emission)

削減貢献(Avoided Emission)とは、製品が使用される場面などでCO₂の排出削減に貢献することです。例をあげると、車体の軽量化による燃費向上に貢献する製品や、断熱作用による冷暖房エネルギーの削減に貢献する製品などがあります。サプライチェーンを通じた削減に結びつくとともに、製品の提供価値の中でも重要なこの項目について、適切に表現することを進めていきます。

イノベーション

オープンイノベーションを活用し、当社製品のケミカルリサイクルとCO₂カーボンリサイクルによる原料化を推し進めることで、化石燃料に依存しないモノづくりを実現し、DIC Vision 2030に掲げる地球環境と社会のサステナビリティに貢献していきます。

オゾン層対策

代替フロンの「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、機器・設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、CO₂の100倍~10,000倍以上の温室効果があり、HFCによる影響で今世紀末までの平均気温上昇は、摂氏約0.5℃分と推計されています。
このような中で、2016年10月、ルワンダのキガリで開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議においてHFCの生産および消費量の段階的削減義務を定める改正(キガリ改正)が行われました。これに伴い、日本でもオゾン層保護法が改正されました。キガリ改正は日本を含む138ヶ国が締結(2022年9月26日現在)。20ヶ国以上の締結という発効条件を満たしているため、2019年1月1日に発効されました。
日本国内においては、2015年4月にフロン回収・破壊法が改正され、フロン排出抑制法が施行され、漏えい量把握と報告が義務化されています。

国内DICグループの2022年度の漏えいフロン量はCO₂排出量換算値で439トン(1事業所または1企業の漏えい量が1,000トン以上で国に報告義務あり)でした。漏えいフロン量はフロン排出抑制法が施行された2015年度から管理を行っていますが、これまでは国への報告義務が必要な水準以内を維持しています。
2022年度には、これらのフロン排出抑制法への法遵守活動が認められ、一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構により実施された「第2回JRECOフロン対策格付け」において、調査対象1,840社中、Aランク企業49社の1社に選ばれました。
今後もDICグループは、継続した法遵守活動とともに、空調機器選定時においてノンフロンなど環境負荷の低い冷媒を選定することに努めるなど、漏えいフロン量の削減に取り組んでまいります。

漏えいフロン量(CO₂換算値)
データ集